固定資産税について。

 固定資産税の課税対象物は(1)土地、(2)家屋、(3)事業用資産(償却対象)の三つになります。「土地」とは、宅地、農地、山林など、「家屋」とは、住宅、事務所、店舗、倉庫、工場などで、「事業用資産」とは、各種の機械、設備品、空調機器など、法人税で減価償却の対象となる資産をいいます。ただ自動車は対象外です。

 これらの資産は登記により、市町村の「固定資産台帳」に細かく記載され、これをベースに課税されます。この台帳に所有者が登録されていない資産は課税されません。この登録資産の評価額を決め、一定税率を掛けてその課税額が決まります。原則1月1日時点で、これらを所有していた人に対して課税します。

 市街地にある宅地の場合、その宅地が面している道路の「固定資産路線価」がまず基礎になります。国税庁はこの道路に面している土地の1平方㍍当たり価格を毎年公表しています。路線価がない地域は別の「倍率方式」で計算することになります。 この路線価は、売買価格を参考にした地価公示価格の7~8割に設定されています。そのため所有する土地の評価額は、下記のようになります。

■固定資産路線価×補正率×土地の面積

  補正率とは、土地の形状(道路面が狭小な土地、不整形な土地、工場隣接地)により、一定割合が減額計算される仕組みです。この土地の評価額(「課税標準」)に、固定資産税率(通常は1・4%)を掛けた数値が固定資産税額になります。 しかし宅地には、宅地の固定資産税負担を軽減する「住宅用地の特例措置」があり、実際の税額は、この計算値よりも低く設定しています。仕組みが非常に複雑なため、補正率や特例措置が見落とされると、本来負担すべき税額よりも高くなる徴税ミスの原因にもなります。また家屋の場合は、構造、材質、築年数などから評価額は算定されます。

 同時に、固定資産税と同時に徴収される「都市計画税」、土地などを相続、贈与を受けた際の「相続税」「贈与税」、土地などを取得したときに課税される「不動産取得税」など、固定資産税の金額をベースに計算されます。固定資産税の税額に誤りがある場合は、これらの税にも影響します。

 固定資産税を考える場合に、問題点があります。主なものとしては、

(1)税額評価の内容が非常に難解

 固定資産税の税額の計算過程が、納税者からみると極めて難解という問題があります。全国的に土地価格が下落傾向にある中、評価額が大して下がらず、その評価方式に疑問が呈される場合もあります。また土地の形状などによる補正率があるときは確認が必要です。納税する側が、固定資産税の課税内容をより理解できるための方策も必要になります。

(2)売却出来そうもない土地も課税対象に

 地方などで多く見受けられる、実際に売ることが困難な土地、放置された土地にも、相応の固定資産税がかかります。そのため実態が反映されていないケースも目立っています。一方で相続などが発生しても、登記されずに課税台帳に記載できずに、課税されていない土地もかなり増えているようです。

 このため、実際には売りにくい土地を所有しているために、思いがけない固定資産税が課税される人がいる半面、登記をしないために固定資産税が課税されず逃げ得をしている人もおり、不公平感が生まれてきます。国も相続(遺言による場合を含みます。) によって不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされましたが、国民に周知徹底されなければ今後ますます未登記の土地が増えることが懸念されます。

 所有者不明の土地を減らすことは大切ですが、未登記の土地が増え土地取引自体が難しい地域では、土地所有=徴税という公式的発想を再検討する必要が出てきています。 固定資産税については、納税者は自分の所有する土地がどのような土地なのかを、よく認識しておく必要があります。徴税に関する情報はすべて納税通知書に記載がありますので、こうした観点から通知書を見ましょう。そうしないとそれは次に掲げる「特典」を見逃している場合があるかも知れないからです。

(1)宅地の特例措置が受けられているか

 この条件が適用されると、宅地の面積に応じて固定資産税額が減額されます。この対象地域となっているかを確認しましょう。

(2)形状の悪い宅地の場合に、その内容が補正されているか

 実際の土地が、傾斜地にある、崖の上にある、間口が狭い、などの場合、それぞれに応じた補正率があるので確認しましょう。複数に該当する場合は、個別に確認します。 (3)宅地の間口・奥行が変更後も正しく評価されているか

 以前広かった土地を分筆することで土地の形状が変わり、間口が狭くなった場合は、税額が安くなります。従来の基準で課税されると、税額が高くなってしまいます。 (4)過去に事務所・店舗だった建物を、住宅に用途変更していないか

 これまで事務所や店舗として使ったところを住宅として使用すると、税額が変更になり安くなります。住宅の特例措置も受けられます。  少なくとも、以上の点をチェックするだけでも、固定資産税を取られ過ぎていないかを判断する材料になると思います。固定資産税納付書を見直すだけでも生活防衛の一助になるかも知れません。

2022年11月01日