レオパレス21の「その後」と「これから」

 有名な建設・賃貸企業レオパレス21が建設したアパートの防火壁手抜き工事が発覚したのは、一昨年3月26日テレビ東京の「ガイアの夜明け」のスクープでした。それによりレオパレス21は手抜き工事と指摘された全国22万戸の防火壁改修工事を実施する責務を負い、一気に経営が悪化しました。
 昨年度は802億円もの赤字を出し、今年も444億円の赤字を計上しましたが、それでも改修工事すべき22万戸のうち、工事が終わったのは4万2千戸に過ぎません。現在の改修工事は月500戸のペースですので、すべての改修工事が終わるのに単純計算で今後30年もかかることになります。
 一昨年の手抜き工事発覚直後にレオパレス21は資金難に陥りましたが、フォーレスト・インベストメントが助け舟として資金援助を行い、レオパレス21は当面の危機を回避しました。
 フォーレスト・インベストメントは米国企業でしたが、現在はソフトバンク傘下に入っています。フォーレスト・インベストメントがレオパレス21に注入した資金は約300億円といわれています。援助といっても14.5%と高率の有利子「貸付」で、利子だけでもレオパレスは年間43億円も負担しなければなりません。
 現在レオパレス21の財務状況は200億円の債務超過に陥っているといわれています。破綻する可能性が高いと思われますが、フォーレスト・インベストメントは300億円の貸付けの担保として、レオパレス21の新株予約権(一株142円)を取得しています。そのためレオパレス21がデフォルトしたなら、投資資金300億円が新株となって、フォーレスト・インベストメントがレオパレス21の筆頭株主として経営権を取得すると思われます。
 フォーレスト・インベストメントは従来から格安賃貸住宅を売りにして日本の不動産業界に参入していました。それは雇用促進住宅などの払い下げなどの物件を競争入札で取得し、そうした物件を月額家賃2万円といった格安賃貸住宅として貸し出すなどして、既に不動産業業界に地歩を築いています。格安なのは家賃だけでなく、仲介手数料0、敷金0、保証金0といった従前の常識を覆すものです。
 レオパレス21の経営権を手に入れたなら、フォーレスト・インベストメントはレオパレス21が家賃保証しているサブリース大家2万8千人に対して、レオパレス21が保証していた家賃契約の解除を通知すると思われます。そして新たに格安賃貸契約を提案し、それが嫌ならサブリース契約の解除を承諾するように迫ると思われます。
 一方で全国のレオパレス21とサブリース契約している大家100人が家賃保証引き下げに反対して提訴しようとしているようですが、レオパレス21は借地借家法第32条の「借賃増減請求権」を盾に、サブリース契約をしている全国の大家さんに補償家賃の引き下げを次々と提案して来ると思われます。
 レオパレス21の手抜き工事の発覚により、これから全国22万戸の賃貸住宅をフォレスト・インベストメントが格安賃貸物件として事業展開することになる可能性があります。そうすると賃貸住宅市場が格安賃貸物件にかき回され、不動産業界に劇変をもたらすことになるかも知れません。

2021年08月01日