不動産はその国の人口動態に大きな影響を受けますが、不動産業界が抱えている課題の一つが、日本が直面している少子高齢化という人口減少問題です。ご存知の通り日本の人口は年々、減少傾向にあり、いわゆる「住宅購入世代」とされている30代の人口も減少しています。住宅購入世代の減少により今後、不動産が今までのように売れなくなったり、借りられなくなる恐れがあります。さらに、高齢化を伴うことから「空き家」や「建物の老朽化」なども懸念されます。
さらにもう一つの問題点は「生産緑地」の優遇期間の終了が上げられます。都市部にある農地は「生産緑地」と「宅地化農地」に分けられますが、生産農地は固定資産税が一般農地並みになる優遇を受けられます。ただし、生産農地には終身営農が条件となっており、宅地転用は指定日から30年経過または土地所有者の死亡が条件となります。2022年には生産緑地の約8割が期限切れになることから、土地や不動産価格の下落が懸念されています。
昨今の社会情勢の変化によって不動産業界も変化せざるを得ないのは、コロナ禍とオフィス需要の変化手はないでしょうか。コロナ禍の影響により、「テレワーク」や「在宅勤務」など私たちの働き方も様変わりしました。一部のIT企業では解約の動きが出るなど、それまで好調だったオフィス賃貸に変化が見られています。「オフィス賃貸」は不動産業界において、重要な収益基盤です。この事業が崩れることは今後、不動産業界にとって大きなリスクになるのではないどしょうか。
東京のビジネス街でも2020年半ばから賃料が下落、空室率が急上昇しています。オフィスは通常、6か月前の解約通告が慣例となっているため、今後、さらに空室率が増加する可能性があります。当初、「コロナの影響は限定的」との見方が大半でしたが、2021年2月には空室率が5%を、6月には6%を超えました。直近の動向をみると、警戒すべき状況に入っています。東京がそうなら、地方都市はさらに厳しい状況になっているといわざるをえません。
以上の三点が不動産業界を取り巻く「負の現状」ですが、根本的な問題は少子高齢化よりもさらに、婚姻率の低下ではないでしょうか。それは新規世帯数が伸びなければ住宅需要そのものが伸びないからです。5年に1度行われる総務省の「住宅・土地統計調査」によりますと、2018年の空き家数は849万戸になっていて。
30年前の1998年から倍以上も増えました。 空き家数を総住宅数で割った空家率は実に13.6%に達して、およそ7戸に1戸が空き家となっています。空家の多くは防災上の問題や環境問題にも及び、深刻な行政課題となって、行政機関も対応する部署を設けなければならなくなるのではないでしょうか。