住み良さランキング2021

 「住み良さランキング」の2021年版が例年通り東洋経済誌に掲載されました。山口県からは下松市が初の10位にランクされ、中国地方でも倉吉市に次いで二位となりました。喜ばしい限りですが、一体何を以て「住み良さ」としているのか疑問が湧き上がりませんか。そこで今年は「住み良さ」の実態に迫ってみたいと思います。
 住み良さには年齢や性別や家族構成により様々な要素が挙げられるでしょうが、東洋経済誌が「住み良さ」の指標として何を重視しているのか探ってみました。
 東洋経済誌では「住み良さ」には「安心度」「利便度」「快適度」「富裕度」の4つの視点から、20のデータを用いて算出しているとのことです。
 そこで具体的なランクづけの各指標ポイントに関する計算方法を紹介します。普通のランク付けのように平均値を50 として、偏差値を算出し、すべての指標の偏差値の平均を「総合評価」としているようです。
 ただそうすると偏差値は特異数値による過度の影響を避けるため、各指標の最高を70、最低を30に調整しているようです。ただ財政力指数は特別財政措置があるため、人口当たり法人市民税は特別区を除外して算出しているとのことです。

A.安心度
(1)人口当たり病院・一般診療所病床数(2019年10月):厚生労働省「医療施設調査」
(2)老年人口当たり介護老人福祉・保健施設定員数(2019年10月):厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」
(3)20~39歳女性人口当たり0~4歳児数(2020年1月):総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」
(4)子ども医療費助成(対象年齢・所得制限の有無)(2021年4月):東洋経済調べ
(5)人口当たり刑法犯認知件数(※)(2019年):各都道府県警察調べ
(6)人口当たり交通事故件数(※)(2019年):交通事故総合分析センター調べ

B.利便度    
(7)人口当たり小売販売額(2015年):総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」
(8)人口当たり大規模小売店店舗面積(2020年):東洋経済「全国大型小売店総覧」
(9)可住地面積当たり飲食料品小売事業所数(2016年6月):総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」
(10)人口当たり飲食店数(2016年6月)総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」

C.快適度    
(11)転出入人口比率(2019年):総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」
(12)水道料金(※)(2021年4月):東洋経済調べ
(13)汚水処理人口普及率(2020年3月):国土交通省、農林水産省、環境省調べ
(14)気候(月平均最高・最低気温、日照時間、最深積雪)(1981~2010年):気象庁「メッシュ平年値データ」
(15)都市計画区域人口当たり都市公園面積(2019年3月):国土交通省「都市公園整備水準調書」

D.富裕度    
(16)財政力指数(2019年度):総務省「市町村別決算状況調」
(17)人口当たり法人市民税(2019年度):総務省「市町村別決算状況調」
(18)納税義務者1人当たり所得(2019年):総務省「市町村税課税状況等の調」
(19)1住宅当たり延べ床面積(2018年10月):総務省「住宅・土地統計調査」
(20)住宅地平均地価(2020年7月):国土交通省「都道府県地価調査」

(注記)
・(1)の病床数は、各市区で算出した値と「二次医療圏」で算出した値を比較し、高い値で偏差値を算出。
・(4)の子ども医療費は、対象年齢と所得制限の有無を東洋経済が指数化して偏差値を算出。
・(7)の小売販売額、(8)の大型店面積は、各市区で算出した値と「東洋経済生活圏」で算出した値を比較し、高い値で偏差値を算出。
・(14)の気候は、月平均最高気温、月平均最低気温、日照時間、最深積雪のそれぞれの偏差値の平均値を採用。
 以上の算出ポイントを総合評価して「住み良さランキング」を作成しているようです。そうして算出した結果2年連続「総合評価1位」は石川県野々市市になっています。
 野々市市は石川県のほぼ中央に位置していて、金沢市と白山市に囲まれた新興都市です。金沢駅まで電車で7分の距離にあり、複数の大学が立地しています。人口は5.3万人で若いファミリー世代を中心に増加が続いている若い街です。
 野々市市における4つの視点の各ランキングは、利便度以外の順位は3桁台であるのに対し、利便度は10位と突出する前回同様の傾向となったという。利便度を構成する指標である「人口当たり小売販売額(以下「小売販売額」)」と「人口当たり大規模小売店店舗面積(以下「大型店面積」)」が、ともに偏差値の上限の70を獲得して1位であることから、商業施設がそろう良好な買い物環境があるとうかがえる。また、安心度の順位は181位であるものの、安心度を構成する指標「子どもの医療費助成」(3位)については、外来・入院ともに「18歳の年度末まで所得制限なし」で利用できる。「20~39歳女性人口当たり0~4歳児数(以下「0~4歳児数」)」も高い。
 他の指標では、快適度を構成する「水道料金」、富裕度を構成する「財政力指数」や「1住宅延べ床面積」、「住宅地地価」なども上位にあるという。
 つまり今後の都市政策に関して、住民の「暮らし良さ」を満足させる政策ポイントが何処にあるのか、東洋経済誌が示した「住み良さランキング」が大いに参考になるのではないでしょうか。

2021年07月01日