新法は「家賃保証」のトラブル解消の切り札にになるか

 不動産業者が直に関わっている問題ではありませんが、賃貸住宅の建設を「家賃保証」制度を前提として勧誘する業者が様々な問題を起こしています。具体的には「家賃保証」をローン返済の根拠にしてアパートなど借家の建築を契約したが、「家賃保証会社」が建設会社とは別会社で、入居率の低さなどを理由に保証した家賃の引き下げや、家賃保証会社の「清算」や「倒産」などによる事業遂行不履行や、徴収した家賃などの使い込みなどといった問題が発生して社会問題化しています。
 そこで今年2月15日に現行の大臣告示に基づく賃貸住宅管理業登録制度(以下「告示制度」という)を廃止する告示が公布され、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下「新法」という)の施行日(6月中旬予定)をもって廃止されます。
 そして国土交通省は4月23日に具体的な新法の「解釈・運用の考え方」という指針を発表しました。それによると「委託を受けて管理する賃貸住宅の戸数が200戸以上である管理業者は、管理業登録の義務が発生し、登録業者は以下の義務を負うことになりました。
1,業務管理者の配置
2,管理受託契約の締結前・締結時の書面交付等
3,金銭の分別管理
4,定期報告の義務
の4条件が義務付けられました。
 具体的には
1,登録業者は管理事務所毎に1名以上の業務管理者を設置することが求められ、その業務管理者は賃貸不動産経営管理士か宅建士の資格者保有者であり、国が指定する講習を受けることが必要となる。
2,管理受託契約の締結前に法で定められた事項を記載した書面を交付し、重要事項説明をしなければならない。また、重要事項説明書と管理受託契約書は別々に用意することが求められる。
3,については、登録業者は自己の固有財産と管理業務において受領する家賃・敷金、共益費等を分別して管理しなければならない。
4,については登録業者は管理業務の実施状況について、定期的に委託者に報告する義務がある、としている。
 新法に対する明確な「指針」が国により示されたことによりいわゆる「家賃保証契約」を巡るトラブル…相続対策や投資と思ってアパートを建設したものの、入居率の低さなどを理由に「家賃保証」契約の条件切り下げや管理会社の破綻…等といった事態がなくなることを期待します。ただ新法が適用される管理会社が「委託を受けて管理する賃貸住宅の戸数が200戸以上である」という条件が付されているため、200戸未満の委託しか受けていない家賃保証会社は新法の適用を受けません。
家賃保証契約という文言から家賃収入を夢見た地主や投資家が、結果として家賃収入が保証されず、返済が滞ったためにアパートを失った上に莫大なローン残を抱える悲惨な結末を迎えることのない「家賃保証制度」が新法により本来の姿になり、アパート建築会社と地主や投資家たちとのトラブル解消になればと思います。しかし、物事の本質として「甘い話には罠がある」と用心するに越したことはありません。自身の身は自身で守るしかありませんから。

2021年05月01日