「TOKYO TORCH」は現代の「戦艦大和」か

 三菱地所は9月17日に東京駅前で進める「常盤橋プロジェクト」の説明会を開き、以前公表した概要に加え、街区名称を「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」に決めたと発表しました。2027年度に完成予定の高さ390メートルの超高層ビルは大阪の「あべのハルカス」(地上300m)を抜いて、日本一高いビルになるそうです。内部にはホテルやホールを整備する方針で、新型コロナウイルス後の時代を見据えた施策を通じて、幅広い層に親しまれるエリアを目指す、と三菱地所では説明しています。
 しかし、どういうわけか私には先の大戦で時代遅れの巨砲大艦主義の「戦艦大和」が連想されてなりません。漠然とですがコロナ禍により巨大ビルを建設する時代は終わったのではないか、と思われてなりません。
 その地域を象徴する巨大高層ビルを称して「ランドマーク・タワー」と呼ぶのだそうですが、人々の関心は規模やゴージャスさから離れて、簡素さと自然への回帰こそがこれからの時代のコンセプトになるような気がしてなりません。たとえコロナ禍が去ったとしても、以前のような過密や高度集積といった都市のコンセプトは時代遅れのものになるように思われてなりません。
 たとえホテル最上階の広々としたスウィート・ルームに魅力を感じたとしても、それは眼を開けている間のことでしかありません。ホテル本来の「宿泊」であれば、部屋数の多い広々とした空間に高額な宿泊料金を支払うことに「費用対効果」を感じられる人は極めて少数ではないでしょう。
 むしろ機能性や利便性といったことが宿泊施設に求められるなら、東京駅正面のホテルなど都心に用事がない限り「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」に宿泊する必要はありません。利便性の高いビジネスホテルに宿泊する方が理に適っているでしょうし、家族と共に団欒を過ごすというのであればキャンプ場か隣接するバンガローに宿泊する方が適切かもしれません。
 テレビやマスメディアは広告宣伝収入の関係から「巨砲戦艦主義」にならざるを得ないのかも知れませんが、庶民の関心事はテレビやマスメディアが囃し立てる方向とズレているのではないかと思われるコロナ禍真っ最中の秋ではあります。

2020年10月01日