下がらない固定資産税評価額

 固定資産税評価額は実勢取引価格の70%ととされていました。確かバブルが弾ける前まではそうでした。
 1991年(平成3年)3月から1993年(平成5年)10月にかけてのバブルの崩壊があって、土地価格は釣瓶落としのように下落しました。しかし土地価格の高騰に連動して引き揚げられた固定資産税評価額はバブル崩壊後に土地の価格が暴落しても、それほど引き下げられませんでした。
 現在では固定資産税評価額の方が取引価格を上回っているのさえ珍しいことではありません。例えば瀬戸内海に面し堤防に沿った1,000坪余りの土地は、かつて海洋レジャー産業のマリン・ポートなど立地する地域だった。その土地の当時の実勢価格は数千万円に達していたと思われます。当然、固定資産税評価額も取引価格の高騰に伴って引き上げられました。
 しかしバブルが去ってクルーザーやレジャーボートを所有する人はいなくなり、年間数十万円もの係船料などを負担する顧客はいなくなり、マリン・ポートを運営していた会社は倒産しました。その地域全体が時代から見捨てられたように寂れましたが、更にその後の東日本大震災により「津波」の怖さが深く浸透して、海に面した土地価格は下落の一途を辿りました。昨年のことその土地は100万円で売買されたと聞きました。嘘のような話ですが、それが現実です。しかし固定資産税評価額は1,000万円に高止まりしたままというから驚きます。
 不動産価格は経済情勢により変動します。銀行利回りよりも価値を生む土地であれば需要があって取引価格は高くなります。が、土地価格が土地利用をして得られる価値を下回っていれば買い手需要がなくなり、そうすると土地価格は下落します。
 土地を担保に金融機関から借り入れしている企業もありますから、固定資産税評価額の下落は痛し痒しでもあります。土地価格が下落すれば担保物件の追加を金融機関から要求されるからです。だから実勢価格が下がっているからといって、固定資産評価額を連動して引き下げられては困る人もいるのが現実です。
 ともあれ、件の土地を100万円で購入した人はこの五月に地方自治体から送付される固定資産税の納付書の金額を見て驚くことでしょう。
 現在も地方都市では依然として不動産価格は下落の一途を辿っています。固定資産評価額と実勢取引価格との逆差額は開くばかりです。

2020年05月01日