「反社会的勢力の定義は困難」は困ります。

 政府は、反社会的勢力の定義について「その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであり、限定的・統一的な定義は困難だ」とする答弁書を閣議決定したそうです。由々しいことだと騒ぎ立てるつもりはありませんが、「反社会的勢力の定義は困難」との閣議決定は不動産の仲介や売買を業として暮らしている者として看過出来ませんので、今月のプログに取り上げました。
 改めて指摘するまでもなく、10年以上も前から不動産業者には「反社会的勢力」に「賃貸物件を仲介してはならない」また物件売買の「斡旋」をしてもならない、とされています。
 それは2007年に政府がまとめた「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」で「反社会的勢力」とは〈暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人〉と、明確に定義され、そうした勢力を社会から排除しようとするメッセージでした。しかし、その肝心要の「反社会的勢力の定義が困難」だといまさら閣議決定されても困ります。
 不動産業者のことだけではないでしょう。民間企業でも反社会的勢力との関係遮断に取り組んできました。また反社会的勢力を撲滅しようとしている全国の警察関係者も、おそらく閣議決定に驚いているのではないでしょうか。都道府県など地方自治体で施行されている暴力団排除条例も骨抜きになってしまい、行政などで社会を明るく住み良くしようと努力されている方々やその関係の方々も同様な思いではないでしょうか。
 全国の不動産業者は「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人(以下、「反社会的勢力」といいます)排除に関する社会的責任を認識し、反社会的勢力による被害を防止し、当社の業務の適切性および健全性を確保する」との基本方針を宣言しています。その宣言の根底となる「反社会的勢力」の定義をしっかりして頂かなくては「部屋を貸さない」ことにより「反社会的勢力」の人たちから人権侵害の訴えを起こされかねません。
 速やかに「反社会的勢力の定義は困難」との閣議決定を取り消して、しっかりと反社会勢力と対峙する国の姿勢を打ち出して頂かく必要があります。不動産業者は何を根拠に「反社会的勢力」に対処すれば良いのか「現場」は混乱するばかりではないでしょうか。


2020年01月01日