全国各地の「通行禁止」紛争

 全国各地で「私道を通行禁止にする」という紛争が起きているようです。つい先日は長崎市青山町の住宅地内を縦断する私道を所有する業者が住民に通行料の支払いを求めて道路の一部を封鎖している問題が裁判沙汰にまでなったようです。住民側は11月3日付で通行妨害の禁止とバリケードの撤去を求める仮処分を長崎地裁に申し立てを行いました。住民側の代理人弁護士によると、申立人は住民7人で車で通行できることを前提に分譲地を購入し、当初の開発業者から通行料の説明もなかったことなどを挙げ、住民側に「通行地役権」や「通行権」があると主張しているもようです。
 このように長年地域住民が通行していたものを、登記簿上の土地所有者が「通行禁止」とすることから全国各地で争いが起きているようです。

 土地所有者が「所有権」を盾にして「通行禁止」の実力行使に出るのはなぜでしょうか。もちろん土地所有者にも言い分はあるようです。が、公共の用に供して来た土地を「所有権」を盾に「通行禁止」できるのかという疑問があります。ちなみに土地の地目が公衆の用に供される道路部分の土地に対する固定資産税は非課税になっているケースがほとんどです。
 また「道路」といってもその形態は様々です。大きく分けて国や地方自治体が所有する「公道」と個々人や企業が所有する「私道」に大別されます。その名の通り「公道」は国や地方自治体が管理し「私道」は土地の所有者が維持・管理する必要があります。
 御存知の通り、家を新築するには「接道義務」があります。一定の道路(幅員2mないし4m)に2m以上接してなければ家屋の新築は許可されません。またすべての道路が「接道要件の道路」と認められるのかというとそうではありません。詳しくは建築基準法第42条に列記してありますが、その第2項に「みなし道路」の規定があります。「みなし道路」とは一般的に「2項道路」と呼ばれていて、建築基準法が制定された昭和25年以前から家屋が建っていた場合、便宜的に現状を追認するために道路要件に満たない道路でも家屋が新築できるとした措置です。現在では地方自治体は「みなし道路」の認定を取り消す方向で動いています。

 ただ「みなし道路」の廃止に関しても実際に適合していない家屋を取り壊すとなると社会に与える影響が大きいため、家屋密集地などでは道路基準を満たすように新築許可に当たっては「セットバック」方式による道路拡張方法を取っています。その手法だと道路拡張まで数十年という長期間を要することから、行政に対する地域住民の不満も根の深いものがあるようです。

2019年12月01日