土地の私有権と公共性について

 土地の有効利用はいかにあるべきか、と真摯に日々考えているのは土地所有者だけではなく、行政も所有権者とは異なる立場で真剣に取り組んでいます。もちろん土地は財産の一つですが、地域の安全や景観や産業に大きく関わる公共性の高い財産です。土地ほど公共性のある、あるいは公共性を求められる財産は他に有りません。
 土地の公共性に鑑みて、行政は工業地域や住居地域、あるいは商業地域などの「用途地域」を定めて、土地利用に関して様々な制限を行っています。ただ都市計画に基づき「用途地域」が定められたのは昭和40年代で、それ以降ほとんど見直しがされていません。見直しを求める声が少しずつ上がっているのも確かです。
 しかし、昨今の土地利用に関して悲痛な声を耳にするのは「農地」です。土地利用に関して最も大きな制限は都市計画とは別の農業振興地域の指定です。その農振地域の中でもさらに地域内における集団的に存在する農用地や、土地改良事業の施行にかかる区域内の土地などの生産性の高い農地等、農業上の利用を確保すべき土地として「農用地区域」に指定されることがあります。農用地区域に指定された土地は、農業上の用途区分が厳しく定められ、原則としてその用途以外の目的に使用することはできません。農地に関してはこのように厳しい「規制の網」が被せられている場合があって、私たち不動産業者が扱う場合は慎重にならざるを得ません。
 ただ時代が大きく変わって、いつまでも農地として土地利用を限定するのもいかがなものかと首を傾げざるを得ない地域がないわけではありません。農地法で土地利用を厳しく制限するのと裏返しにあった食糧管理法に基づくコメの全生産量買い上げ制度が崩壊して久しい昨今、農地に対する規制だけが厳しく残っている現状は高齢化した農地所有者に対しては余りに酷だと思わないでもありません。側聞するところでは自身が交錯できない農地を耕作委託する場合、タダなのは当たり前で反対に委託料を耕作者に反当り年間5万円程度支払う地域もあるようです。
 農地も含めて、土地の有効利用と所有権とはどのようにあるべきか、そろそろ全般的な見直しを考えても良い時期ではないでしょうか。

2018年05月25日