コロナ後の不動産考-2-

 先月はこのブログで「コロナ後の不動産業」と題してコロナ後の不動産業の変化を書きました。その中で不動産に対して「駅前から郊外へ」という需要の変化が起きると指摘しましたが、今月は都会から地方へと不動産に対する需要の変化が起きていることを報告いたします。
 自粛要請解除以前から、私の暮らす地方で不動産需要が起きているのではないか、と感じていました。それも地方内での需要拡大ではなく、大都市から瀬戸内海の離島(離島といっても橋で本土と繋がっていて、近くの空港まで車で一時間以内)の土地を探す問い合わせが目立つようになりました。とはいっても、殺到しているというわけではありません。ただ離島の不動産はバブル崩壊以後見向きもされていませんでしたから、俄かに起きた問い合わせに奇異な感を抱いているいうのが実態です。しかも問い合わせの多くが都会からのものだというのが際立った特徴です。
 テレ・ワークの影響で勤労者が瀬戸内海の不動産を求めているのか、というとそうでもなさそうです。むしろIT企業などのような、何処に本社があろうと業績に大して影響のない業態が移転先として問い合わせている、というのが実態のようです。先日も東京のIT企業が離島に千坪ほどの土地があれば社用地として購入したいとの問い合わせがありました。
 南向きの海を見下ろす小高い丘の上にある土地を紹介しましたが、それでも500万円前後という安さです。バブル期には二千万もした土地ですが、バブル崩壊後は地価が下がりを続けて、現在では持て余した地主が500万円で売りに出していた者です。もちろん海沿いの国道から土地への取り付け道路もある立派な造成地です。都心の事務所を借りるよりは離島に社屋を建設する方が安いとのことのようですが、そうした経済的な側面だけでもないようです。コロナ後に生じた人々の心の変化も影響しているように思われます。
 もちろん別荘地や中古の別荘にも問い合わせがあります。バブル崩壊以降手頃な価格に下落した不動産価格とコロナの漠たる不安の日々を都会で過ごした人達のストレスは相当のものだったようで、都市から地方へ、という不動産需要の流れは決して一時的な「コロナバブル」ではないようです。
 羽田へ直行便のある近くの空港まで車で一時間以内なら、離島といっても決して不便な僻地ではありません。もちろん社会インフラとして光回線もありますし、下水こそ「浄化槽」対応ですが、上水道も通っています。年間約3万円払えば漁業協同組合の準会員として釣船を漁港に係船できます。これほど魅力的な環境が整っていれば「地方」が脚光を浴びても当然ではないでしょうか。地方の時代をもたらすのは「経済特区構想」ではなく、皮肉にもコロナ禍のようです。

2020年07月01日