不動産業界の「黒船」か!

 不動産業界のamazonかと騒がれている会社があります。その名はOYO LIFE(オヨ ライフ)です。日本では今年一月現在で首都圏を中心に急成長していますが、まだ一般的には馴染みが薄いようです。そもそもOYO LIFEとはインドの不動産会社OYOが日本でを立ち上げた不動産会社です。その特徴は賃貸事業の面倒な手続きをなくして「不動産事業の電子化」や「敷金・礼金・仲介手数料・ゼロ」などといった不動産業界の常識破りの事業展開にあります。OYO LIFEの経営者は勝瀬CEOとのことです。
 不動産業界は宅建業法で契約等で厳格な規定が定められていて、ペーパー・レス化が最も遅れている業界だといわれています。不動産賃貸でもホテルを予約するように電話だけで入居や退去ができるなら素晴らしい、と思う人も少なくないようで、首都圏などで破竹の勢いで賃貸物件の数を増やしているようです。今年一月現在で抱える賃貸物件は1000を超えているといいます。勝瀬CEOは今後益々「不動産業界のIT化を画期的に促進する」と意気込んでいます。もちろんWebサイト上で入居したい住宅や部屋を選び、保証人不要、保険や光熱費などの手続きなどもすべてOYO LIFEが行うということだそうです。
 ではどんな経営をしているのかというと、OYO LIFEの事業手法はレオパレス21などのアパート建設と不動産管理を併せて行う「サブリース契約」を取り入れて、オーナーから丸ごと借りて管理会社が貸し出す手法でペーパー・レス化を実現しているようです。
 つまり2017年10月から貸主は「重要事項説明書」をテレビ電話などで説明すれば書面で交付する必要がなくなったことを受けて、OYO LIFEがオーナーと賃貸契約を締結した物件をOYO LIFEが貸し出すから「重説」は対面で説明する必要竿゛ないという理屈のようです。たださすがに契約書は書面を交付しなければなりませんから完全なペーパ・レス化を実現したわけではないようです。
 しかしOYO LIFEが展開する「サブリース」契約の賃貸マンションは家電や家具が備え付けられていて、身一つで転居が可能となっています。その代わり家賃は付近の賃貸相場より少し高めに設定してあり、勝瀬CEOは「18ヶ月まではOYO LIFEのマンションに住んだ方がお得な家賃設定」してあるとのことのようです。つまりイニシャルコストをなくした分をランニングコストで回収するビジネス・モデルのようです。ただ条件として最低でも30日以上は住んで頂くこと、そして90日を超える場合は再契約の必要があるとのことです。それは30日未満では賃貸住宅とみなされず旅館業法に抵触する恐れがあるからです。そして90日を超える場合は「法律上一時使用目的の建物賃貸借」と認定されない恐れがあるからです。
 OYO LIFEにより完全なペーパー・レス化が不動産業界で実現できたわけではありませんが、インドのOYO本社はソフトバンク・ビジョン・ファンドから10億ドルの資金を調達していて、日本での事業展開で初期投資や当座の運転資金に困ることはないようです。ペーパー・レス化という不動産業界の常識に挑むOYO LIFEは果たして不動金業界の黒船になるのでしょうか。それにしても借り手が反社会的な人ではないが、あるいは居場所を転々と移す「オレオレ詐欺」などの犯罪組織でないかなどを、どのようにして見分けるのか疑問が残ります。ホテル事業者が賃貸不動産業者へ近づいた「ウィークリー・マンション」に対して、不動産業者がホテル業者に近づいたOYO LIFE方式と、今後どうなるのか興味のあるところです。ちなみにOYO LIFEのキャッチ・コピーは「旅するように暮らそう」だそうです。

2019年07月01日