相続税の不動産関係の主な改正点。

 平成01年度の相続税の改正で不動産に関する主なものをお知らせまでに。

 夫が死亡した際の妻の取り分は、子がいる場合は遺産全体の2分の1と、民法で決められています。配偶者が残した相続財産が家と土地が中心だと、自宅を処分し売却金額の半分を受け取るという仕組みです。今までの自宅に住めなくなる不条理がありました。思い出の詰まった住宅を手放すことには、法律には沿った措置とはいえ、決して好ましい制度とは思えません。
 これを解決するため、改正相続法では「配偶者居住権」が創設されました。これは住宅の所有権と居住権を分離し、故人の配偶者が所有権を持たなくても自宅に住み続けることを保障する仕組みです。
 居住できる期間は、遺言や遺産分割協議をもとに決められます。この居住権の評価額は、配偶者の平均余命などをもとに決められますが、高齢になるほど評価金額は低くなり、相続財産が多くなる仕組みになります。
 ただし、所有権に比べると居住権のほうが弱いため、居住権登記の手続きをすることで、権利を確保する必要があります。この登記により、子などが所有権を一部は持っているため、所有権を他人に売却されることで、実際に住んでいる家からの退去という事態を防ぐことができます。
 配偶者の権利が認められるもう1つの改正は、婚姻期間が20年以上あれば、夫婦間で贈与された自宅は、遺産分割の対象から除外する仕組みです。自宅は残された配偶者のものとなり、遺産分割の対象から外され、それ以外の遺産を相続人同士が法律に沿って分割します。高齢の配偶者の安定した生活を支援することが目的です。
 この他にも相続で実態に即した改善が見られます。たとえば親と同居していた長男の妻が介護で苦労したとしても、夫の取り分としては評価されても、相続人ではないため彼女自身の貢献度は評価されませんでした。今回の改正により、相続権はありませんが「特別寄与料」という制度が創設され保護されます。
 相続が発生した時点で、介護の貢献度に応じて相続人に対し請求できます。法律上の相続権がない人でも、特別寄与料の請求が法的に認められます。ただし親族以外の第三者が介護に協力したとしても、この特別寄与料は認められません。ますます深刻化する介護問題へ、1つの指針が示されたことになります。
 特別寄与料の請求先は義理の兄弟姉妹になるため、現実的にはかなり大変です。合意できないときには、家庭裁判所が提示している算式が参考になります。家庭裁判所での寄与分の算定は、1日当たり8000円程度を目安に介護した期間を掛けて算定しています。
 ただし相続財産の多寡により、特別寄与料も変わることが予想されます。実際の額は200~500万円程度が目安となるかもしれません。相続財産が少ない場合は、現実には100万円以下となり、家庭裁判所の基準に沿った受取額になるのは難しいケースも出てきそうです。
 他にも「遺留分を正当な権利として保障」などの規定も改正されました。詳しくは税務署なり税理士にご相談されることをお勧めします。

2019年02月12日