不動産登記法の改善を望む

不動産を生業としている者は仕事上、不動産登記とは切っても切れない関係にあります。その不動産登記に関して以前「所有権」が現実の所有者と異なる場合があることに関してブログに書きました。その最大の原因は所有権者が死亡した後も、相続人に所有権の移転登記がなされないケースがあるからです。ことに地方の土地価格が安い地域の土地・家屋に関してそうした所有権の移転登記を放置する場合が多いようです。
 登記簿に現実の所有権者が登記されていない不具合を政府も認めて、登記簿の所有権者と現実の所有者とが合致するように法改正を行う方向で検討を始めたようです。
 所有権者もそうですが、登記簿には登記すべき「権利」が他にもあります。それらは用益権と呼ばれるものと担保権と呼ばれるものとの二種類あります。

<用益権>
 これらは、他人の不動産を使用収益する権利のことで、登記できるものに以下のものがあります。
地上権・・他人の土地などを建物を建てたり、竹木を所有したりできる権利のこと。
地役権・・袋路の土地から道路に出るなど有効活用のため、他人の土地を利用できる権利。
永小作権・・他人の土地を利用して耕作などをする権利。
賃借権・・賃借人が他人の不動産を使用収益できる権利。
採石権・・契約によって、他人の土地などから岩石を採取できる権利。

<担保権>
 不動産を担保にしてお金の借り入れをしている場合にその不動産に設定される権利のことで、以下のものがあります。不動産の登記簿をみることでその不動産に抵当権などの担保権が付いているかどうか分かるのです。
抵当権・・債権者が債務者から担保として不動産に登記し、他の債権者に優先して自分の債権弁済を受けられる権利。
先取特権・・法律で定めるある一定の債権者が他の債権者に優先して弁済を受けることが出来る権利。
質権・・債権者が債務の担保として、質に取ったものを占有できる権利。

 このように、登記できる権利は「所有権」の他にも様々なものがあります。これらの権利に関しても権利者と現実の権利者とが一致している必要があります。特に「用益権」に関しては権利者が死亡した場合に相続人すべてが同意しなければ「用益権」が消滅しないため、土地売買で大きな障害になるケースがあります。「担保権」でも抵当権の一種の「所有権移転の仮登記」には時効がないため、いつまで経っても「時効消滅」にならない不都合が生じる場合があります。こうした現実と乖離しやすい「権利」の登記に関して、第三者への対抗要件が権利者の「権利」を護るために登記するのであれば「主張なき権利者の権利は守られない」という法原則に基づき他の債権等の「権利」と同様に時効が適用されて然るべきだと思います。登記簿上に記載される所有権に関してやっと現実と登記簿上の乖離を解消する動きが出て来たことを歓迎するとともに、さらにもう一歩進めて他の用益権や担保権など登記簿に記載される「権利」に関しても現実に即した法改正が行われることを期待します。

2018年12月15日