不動産が「負」動産になる

 昨日も築50年余の民家の処分を依頼された。田舎の敷地200坪に建つ一軒家はいわゆる「古民家」ではない、古ぼけた老朽家屋でした。農家だったため長屋や米穀倉庫などもあり、なかなかの壮観としかいいようがありません。
 しかし売却するとなると「家」は余分となります。更地ならそれなりに買い手はつくかもしれませんが、値段は坪単価一万円が良いとこでしょう。そうすると敷地に建っている家屋を解体撤去するだけで「足」が出かねません。しかし、こうした不動産ではなく負動産が田舎にはゴロゴロしているのが現実です。
 団塊の世代はやっと70才になったところでまだまだ元気です。団塊世代の子供たちがこうした問題に直面するのは後十年後でしょうが、その前世代の子供たちが負動産問題に直面しています。彼らも高度経済成長時代に成年に達して、就職で都会へ出て行ったまま帰らないため田舎は限界集落だらけです。
 それでも古い田舎造りの家屋なら「古民家」として梁や柱を生かして改築し、蕎麦屋や雑炊屋として店開きしているケースも見受けられますが、戦後のプレハブ住宅なら手の着けようがありません。
 だから現況有姿で「買い手価格」で売ってはどうかと勧めるしかないのですが、そうすると相続した子供たちが憤慨します。生まれ育った家を「そんな捨て値」で売るわけにはいかない、という感情も理解できます。中には「バカにするな」と怒る人さえいますが、しかしそれが田舎の老朽家屋の現実なのです。
 人が住まなくなると家屋はアッという間に「廃屋」化します。時には野生動物が入り込んで荒らしたりします。そして廃屋であろうと、解体撤去に要する費用は変わらりません。なぜなら昔のように「野焼き」が出来ないため、廃屋も解体して金属と材木を分別して産廃処分場に持ち込むしかないからです。
 それが嫌なら都会暮らしに見切りをつけて、両親の暮らしていた田舎へ帰郷することをお勧めします。不動産を負動産にしないためにはそれしかないのですから。

2018年11月18日