「マンション」スラム化

 昨年9月号などで「週刊現代」はマンションの悲惨な近未来予想図を「限界マンション」や「2033年マンションスラム化」という記事で毎週のように掲載して警告していました。いうまでもなく「限界マンション」とは「限界集落」さながらにマンション居住者の過半数が65才以上の人によって構成されるマンションを指すものです。そこでは世代交代や住居者の再生はなく、マンション住民の高齢化と人口減少が続き、やがてマンションの機能が崩壊して人が棲まなくなり放棄される、というものだ。
 マンション機能とは入居者の暮らしを支えるエレベーターや配管などのインフラがキチンと維持・管理されて暮らしに支障のないことです。そのためには修繕積立金が不可欠ですが、支払いが滞ったり投資目的で購入したマンションなどは当初から管理組合に入るのを拒否したりする者がいたりして修繕積立金が不足するのは勿論のこと、居住者がいなくなって空家が増え、マンションのエレベータやエントランス掃除といった共用部分が荒れ果てることが懸念されます。そうすると棲むための居住性が著しく損なわれ、やがては「2033年マンションスラム化」の記事にある通りになる可能性がないとはいえません。
 その論拠として日本では1970年代がインフラ投資のピークで、その耐用年数は50~60年程度とされているため耐用年数がやって来る20~'30年代に改修のピークを迎えます。しかし現状で修繕積立金が充分に積み立てられているマンションは極めて少ないようです。1970年代から80年代にかけて建設されたマンションは管理組合がマンション業者によって運営されているケースが多く、業者によっては管理費を本体事業に回して倒産するケースまであるようです。
 さらに都心に陸続と建てられたタワーマンションなど7階を超える高層マンションでは外壁などの改修工事などで足場を組み立てることは不可能で、宙づりの足場を屋上から吊るす極めて費用のかかる工事を行うしかない、という問題もあります。しかもマンション購入者が賃貸にして入居者と所有者が異なるケースも多いことから、改修費の拠出をマンション入居者で話し合って合意形成を得ることは困難を極めると思われます。
 耐用年数があるのは一戸建て家屋でも同じことで、家を快適な居住状況に保つには絶えず維持・管理を行わなければならなりません。家は一戸だけが孤立して存在するのではなく、地域社会の一戸として社会インフラや地域の治安や安全性を保たなければならなりません。マンションではそうした地域との繋がりさえも希薄になりがちで、一戸建てと比べて「近隣騒音」も含めた治安や安全性もマンション全体の「マンション共同体の一員」として対処しなければならない側面があります。鍵一つで他者から干渉されない「家」が持てる、というのは幻想に過ぎないことを理解し認識すべきではないでしょうか。一戸建て以上にマンションこそ壁一つで隣接する入居住民とのコミュニケーションが必要とされているようです。

2018年08月10日